イラストレーター滝野晴夫氏のアシスタントを1年間務め、その後、フリーとして活躍。しっかりとしたデッサン技術とパソコンを駆使し、独自の地位を確立している。切手からCDジャケット、雑誌、パッケージデザイン等、活躍の範囲は幅広い。インタビュー当日も、作品の締め切り日という忙しい中、話を聞くことができた。
絵を描くことは小さい頃からが好きだったんですが、イラストレーターになったきっかけは、本当に不純な動機なんです。僕が高校3年生のときに、荒井由美さん(現:松任谷由美)がデビューして、彼女のファンになったんです。それで、どうしても彼女に会いたいと思っていたところ、知り合いから彼女が多摩美(多摩美術大学)に通ってるってことを聞いて、「そうか!多摩美に行けば彼女に会える!」って(笑)。それで、高校3年生の2学期の終わりに進路変更して、多摩美を目指したんです。
甘くはなかったですね。昨日・今日、受験用にデッサン勉強し始めた人間が受かってしまうほど簡単に事は運びませんでした。・・・失敗したんですね。親は浪人はダメだって言うし、とりあえずどこかに籍を置こうと。そのとき、当時通っていた高校の音楽の先生が(音楽の先生?)、美術の専門学校を紹介してくれて、「そこに、お1人良い先生がいるから、その人に学べばいいだろう。」って。それで美術の専門学校に通うようになりました。
3年生になったある日、学校のVD研究室の人が僕に、「滝野晴夫さんがアシスタントを募集してるよ。」って教えてくれたんです。その時は特に絵で食べていこうという強い思いはなかったんですが、どんな人か興味もありましたから、お会いしてみる事にしました。
滝野さんのところに行くと、僕以外にも3人のアシスタント希望者がいて、4人で毎日滝野さんのところに通いました。1週間ほど過ぎたときに、滝野さんが「もう明日から来なくていい。後で採用者に電話を入れる」と。たまたま僕に電話があって、アシスタントに決まったわけです。で、なんで僕を採用したのか理由を聞いたら、「電話応対が上手いから」でした(笑)。それが、イラストレーターのはじまりですね。
パッケージデザインには、A.Dおよびデザイナーの方がお考えになったデザインがあり、絵の入るレイアウトスペースは、ほぼ決まっています。葉っぱの1枚から水滴1粒、ライティングまで、ほとんどの要素を指定される中で、彼等が1番求めているものを表現しないといけません。例えば、本当はここにりんごを1個置けば絵としてバランスがもっと良くなると思っても、文字が入るのでそこには描けない。当然チームで作り上げる作業ですから一口にパッケージイラストと言ってもなかなか難しい仕事ですよね。
絵にする側としてはデザインされる方がどこに力点を置いてデザインしようといているのかという意思を打ち合わせ等で話し合い、あるいは読み取り、できるだけイメージに近いものをあげるという努力を常にしなければならないと思っています。プロの仕事人としてデザインをなさる方は、プレゼンで他社の作品と比べられますので、こちらもチームの一員として「ヘタなものはあげられない」という気持ちが強いですね。
まず、絶対的に商品量が多いですよね。例えば、同じ素材の入ったヨーグルトでも、ものすごい数がありますし、数ある中でその商品が他とは違う個性を持った「顔」を持っていなければいけないわけですから、そこがパッケージ・デザイナーの腕の見せ所でしょう。いかに他社と違う「顔」を持ち、消費者の目にとまるデザインをする事が重要ですよね。基本的には、多くのライバルの中にあって目立たなければいけませんから・・・。昔に比べたら絶対的に商品の数・種類が多くなった事はいうまでもありませんが、デザイン的クオリティーの高いものがすごく多くなっている。競争が激しいんだなっていうのは、陳列されてるトコ見るとすごく感じますよね。
僕のようにリアルな絵を描いてる者にとっては、パソコンの登場で、あるジャンルで致命的に仕事を奪われたという気はしてますね。例えば、写真の加工をするにしても、ちょっと絵心があれば、誰でも機械の中でイラストっぽく、手描きのリアルイラストっぽく見せることができるわけです。
だから、最初からリアル画を描いてきた者にとっては、ものすごい脅威でした。パソコンが出始めのころは「いや、やれるよ」なんて思っていましたが、もうすでに、同じ土俵では戦えないんだろうと・・・今はあきらめに近いですよね。
7〜8年前に中堅と呼ばれていたリアル画を描かれていたイラストレーターの7割ほどの方を見かけません。当時はきっと僕よりも上手かっただろうと思える方々がリアル画を描いていない、という現状に驚きます。パソコンの登場が大きく影響しているんじゃないでしょうか。
今、イラストレーターはものすごい数の人たちがいるでしょうが、そういう中で生き残るためには、やっぱり、自分と同じようなタイプの絵を描いている人間よりも、1歩上を行かなければいけません。でないと、絶対に残っていけないと思います。そのためには、「どんな小さな仕事でも、+αな気持ちをタブレット(筆)に込めないと」って、気を引き締めて描いています。
気になるパッケージデザインって滅多に出会わないんですが、1つ例をあげるなら、昔のラッキーストライクのパッケージデザインですね。フィルターの無い正方形。白地に真っ赤な丸がドンってあるデザインで、センスを感じます。そのデザインは、もちろんそのままでも目立つし、捨てられたときにも目立つようにデザインされているんです。昔は今と違って、街のあちこちにゴミが捨てられていたんですが、クシャクシャにされて捨てられてても主張する。ラッキーストライクだと分かるんですよ。
そう計算されてデザインされたらしいんですが、僕は、それがパッケージデザインの基本だと思います。僕もパッケージデザインに関わっている以上、そんなデザインに携わってみたいです。
以前から近所の家のペットを描いていたんですが、3月頃から、そのペットイラストに力を入れていこうと思っています。正式にはドッグアートって言うらしいですが、本来はパソコンを使わずもちろん絵の具で描いていくんですが、今回のはいわゆる「パソコン手描き」です。あとは、たまたま目にした占いで「今年はイベント・展覧会に参加すべき」と出てましたので、ちょっとそのへん鵜呑みにしてみようかと(笑)。
最初は、目標とするイラストレーターがいるかもしれませんが、その人をずっと追いかけるのではなくて、“自分”というものを大切にして欲しいですね。時代の流れを判断しながら状況に合わせて描かないといけないと言われますが、基本的には自分の描きたいものを描きたいようにという意思を貫かなければいけないと思います。
常に向上心を持っていて欲しいですね。僕は、ペーター佐藤さんが好きなんですが、あの方は決して器用なほうではなかったと思うんですよ。でも、絵がどんどん変わっていきました。「絵を変えていくためには、どしたらいいか?」を常に考えている。彼は変化を恐れずむしろそれを望んでいたんじゃないのかな、と思います。第一線で高い評価を受けながらなおかつ変わって行くためにはきっと想像以上に勇気とパワーが必要だったと思います。環境を変えたり、付き合う人を変えたり・・と。向上心を常に持ち続けていたから、作品が色あせず、初めて目にする人にさえ新鮮な感動が伝わるんだと思います。そして描き続けていました。
若い人であれば、特に変わっていくという考え方はとても重要ですよね。ただ、その中でも”なぜ描きたいのか”という“自分の本質”を忘れてはいけません。どんどん色んなことにチャレンジして、変化を恐れないでほしいです。他の人から何か言われたら、それはありがたく受け取っておけばいいんです。必要なものは吸収して、そうじゃないものは捨ててしまう位の気持ちがあってもいいんじゃないかな。怖がらず“自分”を貫いてほしいと思います。
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